山本七平『「空気」の研究』

読みました。
「空気を読めない人」というのは日本においては言われたくない言葉のかなり上位に入る言葉だと思いますが、集団ぐるみ破滅に向かって突っ走っているときに、それを救うのはまさに「空気を読めない人」なんだろうと思います。「水を差す」人ですね。
空気を読むことによって物事が円滑に進む場合があるというのは事実ですが、同時にある種の息苦しさの原因にもなります。空気の読めない人は社会には一定数必要で、またそれを許容できる社会のほうがより健全なんじゃないかと思いました。

「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない。何しろ、専門家ぞろいの海軍の首脳に、「作戦として形をなさない」ことが「明白な事実」であることを、強行させ、後になると、その最高責任者が、なぜそれを行ったかを一言も説明できないような状態に落し込んでしまうのだから、スプーンが曲がるの比ではない。こうなると、統計も資料も分析も、またそれに類する科学的手段や論理的論証も、一切は無駄であって、そういうものをいかに精緻に組みたてておいても、いざというときは、それらが一切消しとんで、すべてが「空気」に決定されることになるかも知れぬ。とすると、われわれはまず、何よりも先に、この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来なにが起るやら、皆目見当がつかないことになる。

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))